プレス機械の構成(後編)

基礎からはじめるプレスの話 第3回/株式会社エヌテック

第3回 プレス機械の構成(後編)

株式会社エヌテック営業部の島田です。

第3回は、第2回に引き続き、プレス機械を構成する各箇所についての説明です。

後編は、クラッチからの回転エネルギーをメインギアに伝えるピニオンギアシャフトから始めます!

エヌテック製のC型プレスです。画像をクリックすると大きな画像が別タブで開きますので、参考にしてください。

プレス機械の構成/プレス・ロボットシステムの株式会社エヌテック

ピニオンギアシャフト(Pinion Gear Shaft)

シャフトとギアが一体になった部品。クラッチから伝達された回転エネルギーをメインギアへ伝える中継の役割をしています。

機種によって、メインギアと直結しているものや複数のギアを組み合わせて駆動するものがあり(機会があれば別途詳述します)、ピニオンギアシャフトのほかに、クラッチ軸、フライホイールシャフトなどとも呼ばれます。

メインギア(Main Gear)

クラッチからピニオンギアシャフトに伝わった回転エネルギーを受け取り、クランク軸に動力として伝える部品です。

自動車のギアがLowからTopへ切り替わるように、回転エネルギーを加圧エネルギーに変換する役割も担っています。

プレス屋さんの豆知識

クラッチから伝達された回転エネルギーをそのままプレスの回転数に置き換えると、加圧エネルギーとしては不足していますが、加工速度としては速すぎるため減速させる必要があります。

ただし、減速させすぎると加圧エネルギーも落ちてしまいますので、適切なギア比(ギア同士の歯数や噛み合わせ)によって回転エネルギーを最適な加圧エネルギーに変換しています。

ピニオンギアシャフトの役割│株式会社エヌテック

クランク軸(Crank Shaft)

メインギアと同期して回転します。クランク軸の「コ」の字部分にスライドが吊り下がるような形になっており、クランクが1回転することでプレスも1工程します。

クランク軸には必ずクランク角時計が付いており、どの位置にあるのかを確認することができます。クランク角時計には時計のような文字盤があり(最近ではデジタル表示のものもあります)、よく角度を時間で表現します。

スライドが最も上にある0分(0度)の位置を「上死点(じょうしてん)」、最も下にある30分(180度)の位置を「下死点(かしてん)」と呼びます。

ロッド胴(Con Rod)

クランク軸とスライドを繋ぐ部品です。

クランク軸を上下から挟み込むような形状になっており、クランク軸の回転する動きを上下運動としてスライドに伝えるため、スライドが常に真っ直ぐ下へ降りるようになります。

コネクティングロッド(略してコンロッド)とも呼ばれます。

スライド(Slide)

金型の上型を固定します。メインモーターからロッド胴まで伝わった一連のエネルギーを製品加工に繋げる箇所です。

スライドにはT形溝が入っており、ここに金型を固定します。

また、エヌテックにはスライド下部プレートというオリジナルのオプションがあります。スライドの下にもう1枚プレートを装着させるもので、大型の金型をお使いになるお客様におススメのオプションです。

スライド下部プレート│プレス・ロボットシステムの株式会社エヌテック

ボルスター(Bolster)

金型の下型を固定します。スライド同様、金型を固定するためのT形溝が入っています。

そのほか、お客様のご要望に応じて、スクラップを落とすための丸穴や角穴を開けることもあります。

まとめ

前回からのまとめ。

  1. メインモーターで発生したエネルギーが
  2. モータープーリ、Vベルトを介してフライホイールを回転させ、
  3. クラッチによってON/OFFを行う(※ここまで前編)
  4. クラッチから伝達されたエネルギーがピニオンギアシャフトのギアとメインギアのギア比により最適化された加圧エネルギーとしてクランク軸に伝わり、
  5. クランク軸で上下運動に変換され、
  6. ロッド胴を通じてスライドに伝わり、
  7. 金型(上型)を固定したスライドが上下することで製品を加工する

プレス機械の模式図/プレス・ロボットシステムの株式会社エヌテック

というのが、クランク式プレスの一連の流れでした。

プレスの製造現場では日常的に、修理現場では故障確認のためによく使われる言葉ばかりです。

それぞれがどのような役目を果たしているのかを理解すれば、会話の内容もより分かりやすくなると思いますので、よかったら参考にしてみてください。